ラビット通信 2025年12月号
2025年12月号
耳カスが健康診断の新たな指標に?!
耳垢(医学的には「耳垢=じこう」または「cerumen」と呼ばれます)は、耳の内側の皮膚を保護し、ほこりや細菌などの異物が鼓膜に到達するのを防ぐ役割を担っています。つまり、耳垢は耳の“バリア”として働いているのです。英国BBCの記事「耳垢が語るあなたの健康」によると、耳垢を通じて心疾患、がん、2型糖尿病などの健康状態を調べる研究が進められていることが紹介されています。
BBCの記事で紹介されている、米国ルイジアナ州立大学の環境化学者ラビ・アン・ムーサ博士は、「耳垢を病気の”レポーター”として注目する理由は、血液や尿、脳脊髄液といった一般的な生体サンプルでは判別が難しく、診断に時間がかかる希少な疾患に対して、新たな手がかりを提供できる可能性があるからです」と述べています。
耳垢は、汗や血液、涙、尿といった一般的な体液と比べて、特定の化学物質をより高い濃度で蓄積する性質があります。
この特性に着目した分析ツールの開発に着手されています。このツールを使うことで、耳垢から特定の種類のがんの有無を高精度で予測でき、耳垢から特定の種類のがんの有無を高精度で予測できる可能性があるといいます。この方法を用いた研究では、リンパ腫や癌腫、白血病などのガン関連する複数の化合物が耳垢から特定されており、これらが疾患の識別に役立つ「指標」として機能することが示されています。
定期的な臨床検査として活用されることが出来れば、わずかな耳垢のサンプルから、糖尿病やがん、パーキンソン病、アルツハイマー病などの複数の疾患を同時に発見できるようになるだけでなく、健康状態に伴う代謝の変化も評価できるようになると期待されています。
補聴器にとっては厄介者の耳カスですが、耳を守る役割もあります。そして新たな健康の指標にもできれば未来が広がります。とはいえ、補聴器には耳カスがついてしまうと、音のつまりに繋がります。ぜひこまめな補聴器のお掃除をお願いします。
